あさりのなかに、カニがいたんだ。
こゆびのつめの、はんぶんぐらいのちいさなちいさなカニ。

「うわあ〜カニだ! あさりのなかにカニがいた!」
すると、おとうさんがいった。
「それ、ピンノってなまえのカニだぞ」
「ピンノ? なんであさりのなかにいるの? たべられたの?」
「たべられたんじゃないよ。あさりのなかにすんでるんだよ」
「え? すんでるの?」
「うん。あさりのかたいからにまもられて、あんぜんだろ?」
「でてこないの?」
「でてこない。あさりのえいようをもらうから、たべるものにもこまらない」
「へえー、ピンノってなんかずるいね」
「ん? ずるい?」
「だって、じぶんではなんにもしないんでしょ?」
「そうか、ずるいか。でもキミだって、ピンノとにたようなもんじゃないか?」
「なんでさ! ぼくがピンノとにてる?」
「やすみのひは、いえからでないでゲームばっかりして、ごはんをおかあさんにつくってもらって、ほら、まるでピンノさ」
「そんなことないよ! そとであそぶことあるし、おてつだいだってするし、ぼくはぜんぜんピンノじゃない!」
「そうかそうか。それはしつれいした……」
でも、おとうさんにそんなふうにいわれたら、だんだんじぶんがピンノみたいって、おもえてきた。
ぼくはピンノみたいかな。
ひょっとしてひょっとすると……
ぼくってピンノなの?